二世帯住宅に増築か別棟か
このコンテンツは、元ハウスメーカーで今不動産特化FPであるカルタが、マイホームに関する情報をわかりやすくお伝えすることを目的としています。
詳しくは運営ポリシーをご覧ください。




こんにちは!
ハウスメーカー 、今不動産特化FPカルタです!

カルタ

広い庭のある実家。
増築して二世帯住宅にした方がいい?
それとも庭先に別棟を建てた方がいい?

夫婦 悩み

一見、増築した方がコストは抑えられそうな気はしますが、実はそうでもありません。
計画によっては、単なる増築にとどまらず、実家の方も大規模なリフォームが必要になるケースもあります。


では別棟が良いのか?
これは実家の敷地によります。そもそも法規制上、別棟を建てられないことだってあるんです。


そこで今回は、庭の広い実家で二世帯住宅を考えるとき、“増築するか別棟を建てるかの決めどころ”を解説します!

それでは、まいりましょう!

二世帯住宅に増築するときの決めどころ

二世帯住宅に増築するときの注意点3つ

特にコストを抑えるという面で検討したい二世帯住宅への増築ですが、注意しなければいけないことが大きく3つあります。

二世帯住宅への増築は法規上のハードルが高い

まず、新築よりも実家を増築して二世帯住宅にした方がコストパフォーマンスが良さそうな気がしますね?

でも実は、そううまくいかないこともあります。

というのも、(二世帯住宅にするに限らず)増築というのは、建築基準法上のハードルがかなり高くなっていて、既存の実家の部分まで大規模なリフォームを迫られることがあるからです。

実家の築年数が浅い。もしくはどのみち実家のリフォーム も考えていたというのなら良いですが、そうでなければ、基本的に増築は難しくなります。

実家のリフォーム

例えば、耐力壁。
これは増築部分だけでなく、既存の実家部分についても耐力の再計算が必要となります。
仮に実家の耐力壁が不足している場合、実家についても補強する必要があり、大きなコストがかかります。


もっとひどいケースでは、実家の基礎の部分からリフォームを迫られることもあります。
そうなってくると、「増築」の域を超えてしまって、もう「建替」に近いですね。


コストを抑えるために実家の増築を考えているのであれば、当初の目的から大きくはずれてきます。
まずは実家が構造上、今の建築基準法の規制にマッチしているのかを調べなければいけません。

(ローンを組む場合)実家も敷地もすべて担保にとられる

もしリフォームローンを借りて二世帯住宅に増築する場合、銀行は、実家部分も敷地もすべて担保にとります

たとえローンの借入額が1000万円で、敷地と建物の資産価値が1億円だったとしても、全部です!
これは、もしローンが返済されずに銀行が担保を処分することになったとき、増築部分だけだと、誰も買い手がつかないから。


また、実家に住宅ローンが残っている場合、今借りている銀行以外は、まず貸してくれないので、事前に相談しておくことをおすすめします。

貸したり売ったりができず、流動性がない

これは別棟を新築することに比べてですが、二世帯住宅に増築した場合は、その家を貸したり売ったりすることが難しくなります

将来的に親の相続があった場合、スペースを持て余すことも考えられます。


別棟であれば、実家部分を賃貸住宅として人に貸す。
もしくは売却することもできるでしょう。


でも二世帯住宅ともなれば、話は別。
親世帯と子世帯を完全に独立させたような二世帯住宅でない限り、人に貸すのは無理です。


売却するケースでも、自ら引っ越さないといけませんし、二世帯住宅は単世帯住宅に比べて需要が低いので、売りにくくなります。

二世帯住宅に増築するメリット

注意点をあげてきましたが、実家を二世帯住宅に増築するメリットももちろんあります。
別棟を新築することと比較してみましょう!

増築であれば介護動線が短くなる

「将来、親の介護がしやすいように二世帯住宅にしたい!」という考えなら、別棟を新築するよりも増築した方が介護負担は軽くなります。

毎日のことになってくると、「介護動線の短さ」というのは、重要なポイント。
別棟になると、いくら近いとはいえ、ちょっと料理の手を離して様子を見るというのも難しくなります。

規模によっては実家に大きな影響なしで増築できる

水回りや玄関など、実家と共有する部分が多くなるほどコストは抑えられます。
「寝室をひとつ足したい」など、あまり大きな規模でないなら、やはり増築の方がおすすめ


注意点であげたような実家のリフォーム問題はありますが、もし増築部分が実家の2分の1以下で、特定の要件を満たす場合は規制が緩和されます。

実家の建築確認申請書と検査済証の提供が必要ですが、ない場合も、現場検査を受けたり、工事中の写真なども提供することで緩和の適用が可能です。

別棟を新築するときの決めどころ

実家に広い庭がある場合、そこを使って別棟で新築することはよくあります。
増築する場合と比べてみましょう!

基本的にひとつの敷地にはひとつの家しか建てられない

増築の場合は法規制が厳しいと話しましたが、別棟で新築する場合も、また別にクリアすべき法規制があります。


建築基準法上では「一敷地一建物の原則」といえるものがあって、原則として敷地に既に実家が建っているのなら、もうひとつ追加で家を建てることはできません


可能であるとすると、実家の付属建物であるケース。
例えば、倉庫とか車庫とかですね。

(ちょっと微妙な話ですが、キッチン、お風呂、トイレという水回り3点セットのうち、どれかがない場合も、付属建物として認められるケースもあります)


ただ、この「一敷地一建物の原則」に対応する方法がないわけではありません。

敷地の「分割」もしくは「分筆(ぶんぴつ)」をして、分けた後の敷地が単独で建築基準法上の条件を満たしていれば、別棟を新築することが可能になります。

敷地の分割と分筆とは

「分割」と「分筆」は、どちらも敷地に境界線をひいて、2以上の敷地に分ける事です。
これらの違いは、登記が発生するかどうか


分割の方は、敷地にイメージ上の境界線をひくだけ。
対して分筆は、境界線をひいて、実際に分けたことを登記します。


どちらの場合も、分けた後の敷地が建築基準法上の条件を満たしている必要があるので、敷地によってはうまく分けられなかったり、どう境界線をひくかで、別棟の間取りにも影響します。

例えば奥行のある敷地の場合、次の図の右側のような境界線を引かないと、実家が接道要件を満たさなくなってしまいます。

(幅員4m以上の建築基準法の道路に、2m以上接道していないと家は建てられない)

敷地の分け方

住宅ローンを借りる場合、おすすめは分筆

例でみたような条件を満たせそうなら、次は分割と分筆のどちらがいいかです。


分割は登記がいらない分、コストは安く済みます。
ただ、住宅ローンを借りるのであれば、おすすめは分筆の方です。

住宅ローンを組む場合、銀行は建物とその敷地を担保にとります。
そして、敷地内にある建物もすべて担保の対象になります。

分割だと、敷地が別れていないので、実家も別棟も敷地も、全部担保に提供しなければいけません。

それで将来相続が発生し、もし実家部分を売ることになった場合、別棟の住宅ローンを完済していない限り銀行は担保をはずしてくれません。
担保のついた土地など、まず誰も買ってくれないので、流動性が下がるという意味では、分割の大きなデメリットになります。


分筆であれば、土地家屋調査士への報酬や登記費用もかかります。
それでも、将来の不動産活用を考えれば、やはりおすすめです。

分筆後の土地利用権は使用貸借でOK

敷地を分筆したら、それを使うのに、親子間で売買したり、借地権の設定をしたり、なにかと面倒なイメージがあるかもしれませんね。

でも、そんなことをする必要は一切ありません。

敷地の名義は親のままで、そのまま別棟を建ててOKです。

親の敷地に子が家を建てるときは、使用貸借という方法をとるのが一般的で、これであれば権利の移動がないので費用がかからず、さらに楽です。


くわしくは、親の土地に家を建てる!税金・相続・分筆の対策はできてる?をご覧ください。

住宅ローンを借りる場合も、親が「担保として敷地を提供する」という内容の承諾書を追加するだけで済みます。

庭先に別棟を建てるメリット

別棟を新築するメリットは、実家を増築することと比べると次のようなものになります。

  • プライバシーを保てる
  • (分筆の場合)将来、不動産の活用がしやすい
  • 増築と違い、建築中に両親の仮住まいが不要

実家を増築して二世帯住宅にする場合と比べて、両親ともよく話し合いましょう!

まとめ

いかがだったでしょうか?


二世帯住宅に増築する場合、既存の実家も現行の建築基準法の適用を受けます。
そのため、実家も大規模なリフォームを迫られることがあり、大幅なコストアップになるかもしれません(実家の2分の1以下の広さで増築するなら、条件緩和あり)。


庭先に別棟を新築する場合、敷地を分割もしくは分筆して、分けた後の敷地が建築基準法上の条件を満たしている必要があります。
増築に比べてコストはかかりますが、将来的に不動産を活用することを考えれば、おすすめできます。



▼あなたにあった工務店を探すには

工務店は、大手ハウスメーカーと違って展示場がありません

工務店って、どうやって探せばいいの⁉︎

そう悩んでいるなら、
▶︎ 工務店の探し方・選び方まとめ!情報収集の方法から工務店の見分け方まで
を参考にしてくださいね!